南山大学観世会Blog

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2013-01-11-Fri-00-16

1/5 能「羽衣」 本番ダイジェスト

本番の写真を謡とあらすじとともにご紹介します。


「のう その衣はこなたのにて候。何しに召され候ぞ。」
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松の枝にかけてあった羽衣を漁夫が持って行こうとしたところ
どこからか声が聞こえてきます。
その声の主は実は天女で、羽衣を返してほしいと訴えます。


「今はさながら天人も 羽なき鳥の如くにて 上がらんとすれば衣なし」
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天女の訴えも虚しく、漁夫は羽衣を隠し立ち去ろうとします。
天女は羽衣がなくては天に帰ることができません。


「春風の空に吹くまでなつかしや空に吹くまでなつかしや」
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天人は自分の故郷を懐かしみ、二度と帰ることができないことを嘆き悲しみます。
その姿を見た漁夫は、天女の舞を見せてもらう代わりに羽衣を返すことを約束します。


「落日の紅は蘇命路の山をうつして 緑は浪に浮島が 払ふ嵐に花ふりて」IMG_0819.jpg

羽衣を返してもらった天女は喜び、
三保の松原の景色を称えながら舞を舞います。


「七宝充満の宝を降らし 国土にこれを ほどこし給ふ」
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天女は衆生済度と国土繁栄を願い、
地上の世界に数々の宝を降らします。


「愛鷹山や富士の高嶺かすかになりて 天つ御空の 霞にまぎれて 失せにけり」
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やがて彼方の富士山へ舞い上がり
霞に紛れて消えていきました。



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2013-01-10-Thu-23-20

1/5 能「羽衣」 舞台裏

能「羽衣」のシテを務めました4年の鬼頭です

本番と舞台裏の写真を撮っていただいたので、
そのときの様子を振り返りつつご紹介します



まず本番前の舞台裏から・・

こちらは着付け部屋です。
IMG_0750.jpg

この部屋で面・天冠以外の装束を着付けていただきました。
着付ける前にはこんなふうに整頓して装束を並べてあります。

ここから装束を着付けていくのですが、装束を着付けるのはかなり大変..
肉付けをしながら着付けていくので着付けるというより荷造りです


着付けが完了したら、いよいよ鏡の間へ。
IMG_07661.jpg

鏡の間というのは見所側から見ると幕の中にあたり
そこが能の直前の待機場所となっています。
ここに入って初めて、シテは面をかけます。

写真はその前に撮ったものです。
周りの人たちが気を遣って一人にしてくれたんですが、
正直このときが一番精神的にキツかったです。

不安と緊張で頭の中ぐっちゃぐちゃでした
ですが一人でいる間になんとか落ち着きを取り戻し、いざ面と対面。


当日使った天冠です。
IMG_0767.jpg

天冠は鳳凰が乗っているものを使用しました。
面は増女。天女役でよく使用される女面です。
扇は広げると桜が散っている柄が描かれている天女扇です。

..と言っても実際私は面をかけていない状態で扇を広げていないので
どんな柄が描かれていたのかあまり把握していません..
ちゃんと見ておけば良かったなぁ。

後見の先生に面をかけていただいたり天冠を付けていただいている間
ひたすら「私は天女、私は天女、私は天女」と頭の中で唱え続けていました。

立ちあがって鏡で自分の姿をきちんと確認したころには
気持ち的にはかなり天女モードになっていた気がします。

緊張していなかったわけではないのですが、
天女としての自分とシテとしての自分が半々で存在していて
万全の状態で始められたように思います。


次は本番の様子を
謡とあらすじと一緒にご紹介します こちらから>>

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2013-01-02-Wed-15-52

羽衣の詞章を読み解く(3)

1月5日に出す能「羽衣」を少しでも楽しく観ていただくために
能の詞章をちょっとだけ取り上げて解説したいと思います。

羽衣を解釈する一助になれば幸いです。
参考文献:日本古典文学全集『謡曲集一』小学館

素人の解説ですので、誤りなどあるかもしれませんが
大目に見ていただけると嬉しいです^^;

羽衣のあらすじはこちらのサイトをご覧ください。
the能.com 演目事典>羽衣


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その3【キュートな菩薩さま】

「南無帰命月天子、本地大勢至。」


現代語訳:
月世界の天子、すなわちその本地の
大勢至菩薩に、帰依し、礼拝いたします。



羽衣の中間部の見せ場「クセ」(地謡に合わせてシテが舞う場面)が終わり
「和合之舞」(笛の旋律に合わせて舞う場面)の直前のシテ(天人)の謡です。

ここでシテは座って合掌をしながら
大勢至菩薩に帰依するという意味で舞を舞うことを祈念します。

「南無」という言葉はサンスクリット語の「namas(ナマス)」や
仏典に用いたパーリ語「namo(ナモ)」の音訳で
「帰命・帰依(信じて寄りすがる)」という意味を表します。

お経で「ナンマイダー」と言っているのは
「南無阿弥陀仏」=阿弥陀仏に帰依します
ということなんですね。

ここまで偉そうに書いてはいますが、
シテのくせに最近まで意味がよく分かっていないまま
謡っていたことをここに懺悔いたします


ところで「大勢至菩薩」ってどんな菩薩なんでしょうね?
先輩は「顔が丸くてかわいい菩薩さまだよね」とか言ってましたが...

ということでグーグル先生に聞いてみました。


智慧の光を持って一切を照らし衆生が地獄・餓鬼界へ落ちないように救う菩薩さま。
像の特徴としては、宝冠の前面に勢至菩薩の場合は水瓶を付けることが多いということだそうです。
(以上ウィキペディアより)

画像は下のリンク先を参照してみてください。
http://www.buddha-hi.net/re/thread-34640-1-1.html

確かにかわいらしいお顔をなさっている...
水瓶がついている様子も窺えますね。


とりあえず、帰依するというからには 
和合之舞を神聖な気持ちで舞わないといけなさそうです。

できるかしらん。



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2013-01-02-Wed-15-10

羽衣の詞章を読み解く(2)

1月5日に出す能「羽衣」を少しでも楽しく観ていただくために
能の詞章をちょっとだけ取り上げて解説したいと思います。

羽衣を解釈する一助になれば幸いです。
参考文献:日本古典文学全集『謡曲集一』小学館

素人の解説ですので、誤りなどあるかもしれませんが
大目に見ていただけると嬉しいです^^;

羽衣のあらすじはこちらのサイトをご覧ください。
the能.com 演目事典>羽衣


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その2【白衣黒衣の天人】

「しかるに月宮殿の有様、玉斧の修理とこしなへにして、
白衣黒衣の天人の、数を三五に分って、
一月夜々の天乙女、奉仕を定め役をなす。」


現代語訳:
ところでその空にある月の宮殿の様子は、
永久に続くようにと美しい斧で建造されており、
そこには白衣の天人黒衣の天人がそれぞれ十五人、
ひと月の毎夜毎夜、役を定めて奉仕している。



この場面は、漁夫から羽衣を返してもらった天人が
お礼の舞を見せる際に月の宮殿の様子を説明しているものです。

「数を三五に分って」とありますが、この「三五」というのは
「3×5=15」という意味で「十五」を表し、
白衣と黒衣の天人が十五人ずついることを表しています。

九九を使って数を表すというのがなんともユニークですよね。

さてさて。白衣黒衣の天人...
これが何を指しているかわかりますか?



なぞなぞですデデン

月の宮殿で天人がはたらいています。
白衣の天人が15人、黒衣の天人が15人います。
宮殿にはいつも15人の天人がはたらいており、残りの15人は非番です。

月の初めには白衣の天人が一人宮殿に入り、黒衣の天人が一人抜けます。
こうして毎日一人ずつ白衣の天人が入り黒衣の天人が出て行くと
15日目には宮殿の天人は全員白衣の天人になります。

16日目から30日目まではそれまでの逆で
黒衣の天人が一人はいるごとに白衣の天人が一人抜けて行きます。

さて、これが表すものとは??



もうお分かりですよね?

天人の衣の色は、月の満ち欠けを表しているんです。
15日目は全員白衣の満月、30日目は全員黒衣の新月..ということですね。

この解説は『謡曲拾葉抄』にあるそうです。

月の満ち欠けを天人の衣の色で
考えていたなんて面白いと思いませんか?

それにしても黒衣の天人ってちょっとミステリアスですよね。
ちなみに能で天人役をするときは、白や赤の長絹(羽衣)を
着ることが多いです。

当日何色の装束を着るかは..観てのお楽しみですね



次>その3【キュートな菩薩さま】

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2013-01-02-Wed-14-42

羽衣の詞章を読み解く(1)

1月5日に出す能「羽衣」を少しでも楽しく観ていただくために
能の詞章をちょっとだけ取り上げて解説したいと思います。

羽衣を解釈する一助になれば幸いです。
参考文献:日本古典文学全集『謡曲集一』小学館

素人の解説ですので、誤りなどあるかもしれませんが
大目に見ていただけると嬉しいです^^;

羽衣のあらすじはこちらのサイトをご覧ください。
the能.com 演目事典>羽衣

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その1【天人の五衰】

「涙の露の玉鬘、かざしの花もしをしをと
 天人の五衰も、目の前に見えてあさましや。」


現代語訳:
天人の涙は、露の玉のごとくこぼれ、
玉の髪飾りにつけた花もしおれて、しおしおとした姿は、
話に聞く「天人の五衰」を眼前に見る有様、まことにあさましいことだ。


天人が漁夫に羽衣を取られてしまったことで
涙にくれて衰弱していく様子を表しています。

「涙」「露」「玉」が天人の涙を表す縁語となっていて、
この場面でシテの天人は橋掛かり(舞台から幕の方へ伸びている橋)で
泣く動作(「シオリ」といいます)をします。

「しをしを」という擬態語は現在ではあまり使われませんが
草木が「しをれる」の「しを」と関係しており
気落ちして力が抜けたさまや、涙にぬれたさまを表します。

さて、「天人の五衰」という言葉ですが
これは天人が死ぬ時にあらわれる五つの衰弱の様子を指しています。

『往生要集』では次のように書かれています。

命終に臨む時は五衰の相現ず。
一には頭の上の花鬘忽ちに萎み
二には天衣、塵垢に著(けが)され、
三には腋の下より汗出で、
四には両の目しばしばくるめき、
五には本居を楽しまざるなり。


羽衣を取られた天人は、天に帰ることのできないあまりの悲しさに
心も体も弱り果ててしまうわけですね。

実際にはシオリ(顔をふせて手を二回顔にかざす)だけで
その悲しみを表さなければならないので難しいところです...

この詞章が聴こえてきたら、
「天人の五衰」を想像しながら観ていただければと思います。



次>その2【白衣黒衣の天人】

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